これは人形を恐怖の対象に据えたアメリカのホラー映画である。
あの悪趣味すぎることで有名な「SAW」の監督が制作に携わっているらしいが、まったくもってグロくはない。
またこの作品はシリーズもので、前作に「死霊館」、次作に「アナベル 死霊人形の誕生」があるらしいが、私は「アナベル 死霊館の人形」しか見たことがない。それでも話の中で分からないところは特になかったように思う。
以下は激しいネタバレを含むので、まだ見ていない人は注意!
ここがイイね「アナベル 死霊館の人形」
1.それなりにお父さんが頼りになる。
この手の母が子供を守るタイプの洋モノホラー映画は、大抵父が驚くほど鈍感で頼りにならない(それどころか「エスター」のように父が養子のハニートラップに引っかかることも)。しかしこの作品では、何かに取り憑かれていると分かったら神父を呼んできたり母と娘が危険だと感じたら多忙な中(父の職業はお医者様である)飛んで帰ってきたりとそれなりに父が頼りになる。
(とはいっても父は肝心なときにはいつもいないのだが)
洋モノホラー映画を見ているとあまりの父の鈍感さや愚かさにいらつくことが多いが、この作品はそのようなことはないので恐怖に集中できるだろう。
2.洋画ならではの恐怖
恐らくこの家庭はアメリカの中でも裕福な方だと思うのだが、それを抜きにしてもアメリカの家は広い。その家の広さゆえに、家の中にいても他の部屋はどのような状況になっているか分からないことから生じる恐怖が伝わってきた。日本の標準的なサイズの家では、家の中で起きることだけであれほどの恐怖を演出することは難しいと思う。
また乳児を1人で子供部屋に寝かせるというのもアメリカ(というより欧米なのか?)ならではだと感じた。甘え癖がつくのを恐れているのだろうが、悪魔に憑りつかれている緊急事態のときぐらい近くで寝かせておいたら?と思ったり・・・
ここがヘンだよ「アナベル 死霊館の人形」
1.人形の顔が怖すぎる
父が買ってきた人形の顔が、悪魔が憑りついていることと関係なしに、そもそも怖すぎるのである。しかもどことなく食い倒れ人形に似ている。母がそれを見て喜んでいるのがまったくもって理解不能である。
2.結末
何となく予想していた結末だが、最終的にエブリンが死んで終わる、そしてその死を正当化して終わるというのは何となくモヤモヤする。しかもエブリンが死のうとしたときに父(ジョン)も母(リア)もあまり積極的に止めようとしていないのである。母(リア)は放心状態だったので仕方がないといえなくもないが、父(ジョン)が母(リア)の自殺は必死で引き留めたのにエブリンの自殺はそれほど必死に引き留めなかったのは利己的だと感じた。
この「生贄を捧げる」結末をどう思うかについては宗教観のようなものが関係してくるのだと思う。私はキリスト教とは縁遠い人生を送ってきたためか納得できなかった。
エブリンには、娘を死なせてしまった罪が自分に許されるような生き方を、この世で追い求めてほしかった。
母(リア)の命とエブリンの命の重さに違いがあるのだろうか。母(リア)は死んではいけないが、エブリンは死んでもいいのだろうか。